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📖 経済学・経済政策

出題傾向(R3〜R7)

出題あり 出題なし R3 R4 R5 R6 R7
A1. 国民経済計算・GDP 11問

国民経済計算・GDP の要点まとめ

国民経済計算(SNA)は、国全体の経済活動を体系的に記録する統計体系です。中小企業診断士試験では、GDP の定義、計算方法、および経済指標としての活用が重要テーマとなります。

GDP(国内総生産)の基本概念

  • GDP:一定期間(通常1年)に国内で生み出された付加価値の合計
  • 国内で生産されたすべての最終財・サービスの市場価値を集計
  • 中間財は二重計算を避けるため除外
  • 名目GDP:当年の価格で評価した値
  • 実質GDP:基準年の価格で評価した値(物価変動の影響を除去)

GDP の三面等価の原則

GDP は異なる視点から同じ値を計測できます。試験では各面の特徴と使い分けが問われます。

  • 生産面:付加価値法。各産業が生み出した付加価値の合計
    • GDP = 産出額 − 中間投入額
  • 支出面:需要側からのアプローチ
    • GDP = C(民間最終消費支出)+ I(民間投資)+ G(政府支出)+ X(輸出)− M(輸入)
    • この式を GDP = C + I + G + (X − M) と表記
  • 分配面:所得側からのアプローチ
    • GDP = 雇用者報酬 + 営業余剰 + 固定資本減耗 + 生産・輸入税 − 補助金

重要な経済指標

  • GNP(国民総生産):国民が世界中で生み出した付加価値。GDP との違いは所得の流れに注目
  • 国民可処分所得:GNP から対外純所得と現在移転を調整
  • GDP デフレーター:名目 GDP ÷ 実質 GDP で計算される物価指数
  • GDP ギャップ:潜在 GDP と実質 GDP の乖離。失業率や物価上昇率と関連

試験頻出の計算パターン

  • 支出面から GDP を求める問題(C, I, G, X, M の合成)
  • 名目 GDP と実質 GDP の関係から物価変動を算出
  • 付加価値法による各産業の GDP 寄与度の計算
  • 所得面から民間最終消費支出やその他項目を逆算

頻出ポイント

  • 三面等価の理解:同じ GDP が生産面・支出面・分配面で同じ値になることを確認できるか
  • 名目 GDP と実質 GDP の区別:計算式と意味上の違いを明確に理解
  • 支出面の公式暗記:C + I + G + (X − M) = GDP は必須。各成分の増減が GDP に与える影響を理解
  • 中間財の除外原則:なぜ中間財を除くか、二重計算の防止という論理を押さえる
  • 経済政策との連動:GDP成長率、インフレ、失業率といった指標が経営判断にどう影響するかの視点
関連過去問(11問)
令和3年度 第1問 下図は、2019年1-3月期から2020年7-9月期における日本、アメリカ、中 国、イギリスの実質国内総生産(前期比、四...
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令和3年度 第12問 全要素生産性(TFP)に関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答 群から選べ。 a 新しい技術の開発は、全要素...
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令和4年度 第3問 国民経済計算の考え方に関する記述として、最も適切なものはどれか。
令和5年度 第4問 国民経済計算においてGDPに含まれる要素として、最も適切な組み合わせを下 記の解答群から選べ。 a 農家の自家消費 b ...
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令和6年度 第1問 下図は、日本の2022年の名目国内総支出(559兆7,101億円)の内訳を示したも のである。 図中のA~Cに該当する項...
令和6年度 第4問 国民経済計算の考え方に関する記述として、最も適切なものはどれか。
令和7年度 第4問 国民経済計算の考え方に関する記述として、最も適切なものはどれか。
A2. 財市場とIS曲線 12問

財市場とIS曲線の要点まとめ

IS曲線は、財市場が均衡する利子率と所得の組み合わせを示す曲線です。マクロ経済学の基本概念であり、中小企業診断士試験では毎年出題されています。

IS曲線の基礎

IS曲線は以下の財市場均衡条件から導出されます:

  • Y = C + I + G(所得=消費+投資+政府支出)
  • S = I(貯蓄=投資)の条件で均衡
  • 消費関数:C = C₀ + cY(c:限界消費性向、0<c<1)
  • 投資関数:I = I₀ - ir(i:感応度、r:利子率)

利子率が上昇すると投資が減少し、所得が低下します。逆に利子率が低下すると投資が増加し所得が上昇するため、IS曲線は右下がりの形状をしています。

IS曲線のシフト要因

以下の要因によってIS曲線全体がシフトします:

  • 政府支出(G)の増加 → IS曲線右シフト(拡張的財政政策)
  • 政府支出(G)の減少 → IS曲線左シフト(緊縮的財政政策)
  • 自律的消費(C₀)の増加 → IS曲線右シフト
  • 自律的投資(I₀)の増加 → IS曲線右シフト
  • 限界消費性向(c)の上昇 → IS曲線右シフト(乗数効果拡大)
  • 税金の増加 → IS曲線左シフト

乗数効果

乗数(k)とは、支出増加が所得に与える倍数効果です:

  • 乗数 k = 1/(1-c)(cは限界消費性向)
  • 限界消費性向が大きいほど乗数は大きくなる
  • 政府支出増加による所得増加:ΔY = k × ΔG
  • 減税による所得増加:ΔY = k × c × ΔT

IS-LM分析への応用

IS曲線はLM曲線(貨幣市場の均衡)と組み合わせて、マクロ経済全体の均衡を分析します。IS-LM交点が経済全体の均衡点(利子率と所得)を決定します。

試験出題の特徴

過去5年で12問出題されており、主に以下が問われます:

  • IS曲線の定義と性質(右下がりの理由)
  • 政策変化によるIS曲線のシフト方向
  • 乗数効果の計算
  • 限界消費性向と乗数の関係
  • IS-LM分析における政策効果の比較

頻出ポイント

  • IS曲線が右下がりである理由:利子率上昇→投資減少→所得低下
  • 政府支出増加はIS曲線を右シフト(所得増加)させる
  • 乗数 = 1/(1-c)で、限界消費性向が高いほど乗数効果は大きい
  • 減税よりも政府支出増加の方が乗数効果が大きい(cを掛ける分だけ小さくなるため)
  • IS曲線のシフト幅 = 政策変化 × 乗数
関連過去問(12問)
令和3年度 第5問 設問1 生産物市場の(cid:13432)衡条件は、総需要=総供給である。総需要ADと総供給ASが以 下のように表されるとき、下...
令和3年度 第5問 設問2 生産物市場の(cid:13432)衡条件は、総需要=総供給である。総需要ADと総供給ASが以 下のように表されるとき、下...
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令和4年度 第6問 設問2 下図は、45度線図である。この図において、総需要はAD=C+I+G(ただ し、ADは総需要、Cは消費支出、Iは投資支出、...
令和5年度 第7問 下図は、45度線図である。この図において、総需要はAD=C+(I ただし、 ADは総需要、Cは消費支出、Iは投資支出)、...
令和5年度 第8問 設問1 下図は、IS曲線とLM曲線を描いている。この図に基づいて、下記の設問に答 えよ。 (設問1) IS曲線に関する記述とし...
令和6年度 第7問 生産物市場の均衡条件が以下のように表されるとき、減税の乗数効果を大きくす るものとして、最も適切なものを下記の解答群から...
令和6年度 第8問 財政の自動安定化装置(ビルトイン・スタビライザ―)としての機能が比較的強い と想定される税の仕組みとして、最も適切な組み...
令和7年度 第7問 設問1 下図は45度線図である。この図において、Y は現実のGDP、Y は完全雇用 0 F GDPであり、総需要AD、総供給AS...
令和7年度 第7問 設問2 下図は45度線図である。この図において、Y は現実のGDP、Y は完全雇用 0 F GDPであり、総需要AD、総供給AS...
令和7年度 第8問 加速度原理の考え方による投資の決定に関する記述の正誤の組み合わせとして、 最も適切なものを下記の解答群から選べ。 a 生...
A3. 貨幣市場とLM曲線 5問

貨幣市場とLM曲線

貨幣市場とLM曲線は、マクロ経済学の基礎理論であり、金利と所得の関係を示す重要な概念です。中小企業診断士試験では、貨幣供給・需要の均衡、LM曲線の導出と移動、IS-LM分析が繰り返し出題されます。

貨幣市場の基本構造

貨幣市場は、貨幣の供給と需要が決定される市場です。

  • 貨幣供給(Ms):中央銀行が供給する貨幣量。通常は外生変数(政策変数)として固定
  • 貨幣需要(Md):経済主体が保有したい貨幣量。取引需要と資産需要から構成
  • 貨幣市場の均衡:Ms = Md で決定される金利水準

貨幣需要の構成

  • 取引需要:商取引に必要な貨幣。所得(Y)に比例して増加 → Md1 = L1(Y)
  • 資産需要:資産として貨幣を保有する需要。金利(r)が高いほど減少 → Md2 = L2(r)
  • 総貨幣需要:Md = L1(Y) + L2(r) = L(Y, r)

金利が上昇すると、債券などの金利資産の魅力が増し、貨幣保有のコスト(機会費用)が増加するため、資産需要が減少します。

LM曲線とは

LM曲線(流動性・貨幣供給曲線)は、貨幣市場が均衡する所得と金利の組み合わせを示す曲線です。

  • 縦軸:金利(r)、横軸:所得(Y)
  • 右上がりの曲線
  • LM曲線上では常に Ms = Md が成立

LM曲線の導出メカニズム

所得が増加すると、取引需要が増加し、貨幣需要が増加します。貨幣供給が一定の下では、貨幣市場の均衡を保つために金利が上昇する必要があります。この関係がLM曲線を形成します。

  • Y↑ → Md↑ → r↑(Ms一定の場合)
  • LM曲線は右上がりの傾き

LM曲線の移動要因

LM曲線は以下の場合に移動します:

  • 貨幣供給の増加:LM曲線が右へ移動(拡張的金融政策)
  • 貨幣供給の減少:LM曲線が左へ移動(緊縮的金融政策)
  • 金利感応度の変化:資産需要の金利に対する感応度が高まると、LM曲線の傾きが緩くなる
  • ※所得や金利の変化では曲線は移動せず、曲線上の点が移動するのみ

IS-LM分析への応用

LM曲線はIS曲線(投資・貯蓄曲線)と組み合わせて、マクロ経済全体の均衡を分析します。

  • IS曲線とLM曲線の交点 = 短期マクロ経済均衡
  • この点で、所得と金利が同時に決定される
  • 金融政策と財政政策の効果を分析する基本ツール

頻出ポイント

  • 貨幣需要=取引需要(所得に依存)+資産需要(金利に反比例)の構造
  • LM曲線は右上がり(所得↑ → 金利↑)
  • 貨幣供給増加 → LM曲線右移動、金利低下、所得増加
  • LM曲線の移動と曲線上の移動を区別する(政策変数vs内生変数)
  • IS-LM分析で均衡点の変化を追跡する能力が必須
関連過去問(5問)
令和3年度 第7問 貨幣乗数に関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。 a マネー・ストックが1単位増えると、マネタリ...
令和3年度 第8問 金融政策に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答 群から選べ。 a 投資の利子感応度が大きいほど...
令和5年度 第8問 設問2 下図は、IS曲線とLM曲線を描いている。この図に基づいて、下記の設問に答 えよ。 (設問2) LM曲線に関する記述とし...
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令和6年度 第6問 貨幣需要に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答 群から選べ。 a 貨幣は流動性が高いので、利子...
A4. IS-LM分析 7問

IS-LM分析の基本概念

IS-LM分析は、財市場と貨幣市場の同時均衡を図解することで、国民所得と利子率の決定メカニズムを説明するマクロ経済学の重要な分析手法です。

  • IS曲線:投資と貯蓄が均衡する点の軌跡(財市場の均衡)
  • LM曲線:流動性選好と貨幣供給が均衡する点の軌跡(貨幣市場の均衡)
  • 両曲線の交点が、経済全体の均衡国民所得と均衡利子率を決定

IS曲線の特性

IS曲線は利子率と国民所得の負の関係を示します。

  • 利子率が低下 → 投資需要が増加 → 国民所得が増加(曲線が右へシフト)
  • 利子率が上昇 → 投資需要が減少 → 国民所得が減少(曲線が左へシフト)
  • IS曲線は右下がりの形状
  • 政府支出増加や減税 → IS曲線が右へシフト(拡張的財政政策)

LM曲線の特性

LM曲線は利子率と国民所得の正の関係を示します。

  • 国民所得が増加 → 取引需要が増加 → 利子率が上昇(曲線が右へシフト)
  • 国民所得が減少 → 取引需要が減少 → 利子率が低下(曲線が左へシフト)
  • LM曲線は右上がりの形状
  • 貨幣供給量増加 → LM曲線が右へシフト(拡張的金融政策)
  • 貨幣供給量減少 → LM曲線が左へシフト(緊縮的金融政策)

政策効果の分析

IS-LM分析により、財政政策と金融政策の効果を比較できます。

  • 財政政策(IS曲線右シフト):国民所得と利子率の両方が上昇。ただし利子率上昇により投資が部分的に抑制される可能性あり
  • 金融政策(LM曲線右シフト):国民所得が上昇し、利子率は低下。金融政策単独では効果的
  • スタグフレーション下:両政策の効果が複雑になり、政策の選択が重要

重要な留意点

  • IS-LM分析は短期分析であり、物価水準を固定と仮定
  • 実際の経済ではより複雑な要因が作用
  • 国際資本移動が大きい開放経済では、IS-LM分析の適用に限界がある

頻出ポイント

  • IS曲線は右下がり、LM曲線は右上がりという基本形状の理解
  • 政策シフト時のIS・LM曲線の移動方向と、国民所得・利子率の変化パターン
  • 利子率感応性:投資が利子率に敏感か否かで、政策効果が変わる
  • 財政政策と金融政策の相対的な有効性の比較
  • 令和3年度以降の出題では、具体的な数値計算や図の読み取りが増加傾向
関連過去問(7問)
令和3年度 第6問 設問1 下図は、IS曲線とLM曲線を描いている。この図に基づいて、下記の設問に答 えよ。 利子率 LM IS GDP (設問1...
令和3年度 第6問 設問2 下図は、IS曲線とLM曲線を描いている。この図に基づいて、下記の設問に答 えよ。 利子率 LM IS GDP (設問2...
令和5年度 第11問 設問2 国債に関する下記の設問に答えよ。 (設問2) 政府の国債発行に関する理論についての記述として、最も適切なものはどれ か...
令和6年度 第11問 設問1 下図のようにIS曲線とLM曲線が描かれるとする。ただし、Y は、完全雇用 GDPであるとする。 この図に基づき、下記の...
令和6年度 第11問 設問2 下図のようにIS曲線とLM曲線が描かれるとする。ただし、Y は、完全雇用 GDPであるとする。 この図に基づき、下記の...
令和7年度 第10問 設問1 下図は、IS曲線とLM曲線を描いている。この図に基づいて、下記の設問に答 えよ。 (設問1) この図に関する記述の正誤...
令和7年度 第10問 設問2 下図は、IS曲線とLM曲線を描いている。この図に基づいて、下記の設問に答 えよ。 (設問2) IS曲線とLM曲線に関す...
A5. AD-AS分析・物価 6問

AD-AS分析・物価の要点まとめ

AD-AS分析は、マクロ経済の需給バランスを通じて、国民所得と物価水準の決定メカニズムを説明する基本フレームワークです。中小企業診断士試験では、経済変動の要因分析や政策効果の評価において頻出です。

1. 基本構造

  • AD(総需要)曲線:右下がり。価格が低いほど需要量が増加
  • AS(総供給)曲線:短期は右上がり、長期は垂直
  • 両曲線の交点で均衡国民所得と物価水準が決定される

2. AD曲線のシフト要因

AD曲線右シフト(需要増加):

  • 政府支出の増加(財政政策)
  • 金銭供給量の増加(金融政策)
  • 輸出需要の増加
  • 消費者信頼感・企業の期待改善

AD曲線左シフト(需要減少):上記の逆

3. AS曲線のシフト要因

短期AS曲線(粘着的な名目賃金・価格)のシフト:

  • 右シフト(供給増加):生産技術向上、労働供給増加、投資増加
  • 左シフト(供給減少):スタグフレーション要因として、石油ショック、供給ショック、賃金上昇圧力

長期AS曲線:完全雇用の潜在GDP水準で垂直。供給ショック時も長期的には復帰

4. 物価と経済変動

  • 需要インフレ:AD曲線右シフト→所得・物価上昇(短期は失業率低下)
  • コストプッシュインフレ:AS曲線左シフト→物価上昇・失業並存(スタグフレーション)
  • デフレーション:AD曲線左シフト→所得・物価下落

5. 政策の効果分析

財政政策(政府支出・税制):

  • AD曲線シフト→短期的に所得増加・物価上昇
  • 長期では物価上昇のみ(クラウディングアウト)

金融政策(金利・通貨供給量):

  • AD曲線シフト→同様の効果
  • 金利低下→民間投資・消費促進

6. 試験出題パターン

  • グラフの読み取り:曲線シフトの原因特定
  • 経済事象の分析:「〇〇が起きたとき、AD-ASはどう変わるか」
  • 政策効果の比較:財政政策と金融政策の違い
  • 物価と失業の関係性:フィリップス曲線との組み合わせ

頻出ポイント

  • 短期と長期の区別:短期AS右上がり、長期AS垂直という違いを図で描き分ける
  • 供給ショック(石油ショック)の影響:スタグフレーションはAS左シフトで説明
  • AD曲線シフト要因の網羅:財政・金融政策、消費・投資、輸出変動を即座に判定
  • 物価上昇と失業の相互作用:需要インフレと供給ショックで反対の政策課題が生じることを理解
  • グラフ描画スキル:曲線の移動方向と新しい均衡点を正確に特定する問題演習
関連過去問(6問)
令和4年度 第7問 設問1 下図には、右下がりの総需要曲線ADと垂直な総供給曲線ASが描かれている。 Y Fは完全雇用GDPである。 この図に基づい...
令和4年度 第7問 設問2 下図には、右下がりの総需要曲線ADと垂直な総供給曲線ASが描かれている。 Y Fは完全雇用GDPである。 この図に基づい...
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令和6年度 第3問 下図は、日本、米国、ユーロ圏の消費者物価(食料及びエネルギーを除く総合、 前年比、%)の推移を示したものである。 図中の...
令和6年度 第12問 自然失業率仮説に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記 の解答群から選べ。 a 現実のインフレ率が期待...
令和7年度 第9問 物価上昇率と利子率の関係に関する考え方にフィッシャー方程式がある。フィッ シャー方程式に関する記述の正誤の組み合わせとし...
A6. 国際マクロ経済 20問

国際マクロ経済の要点まとめ

国際マクロ経済は、開放経済における国内経済と国際経済の相互作用を分析する分野です。中小企業診断士試験では、為替、国際収支、資本移動などの基本概念と、それが企業経営に与える影響が問われます。

1. 為替相場の基礎

  • 名目為替相場:二国間の通貨の交換比率(例:1ドル=150円)
  • 実質為替相場:物価水準を考慮した為替相場(国際競争力の指標)
  • 円高:輸出企業の採算性悪化、輸入企業の競争力向上
  • 円安:輸出企業の採算性向上、輸入企業の競争力低下

2. 国際収支構造

国際収支は経常収支と資本収支に分かれます。

  • 経常収支:貿易収支(商品・サービス)+所得収支+移転収支
  • 資本収支:直接投資、証券投資、その他投資などの資本取引
  • 経常収支黒字=海外への純資産増加
  • 経常収支赤字=海外からの資金流入が必要

3. 購買力平価説(PPP)

  • 同一商品は同一価格で取引される(国際仲裁により成立)
  • 絶対的PPP:e = P/P*(為替相場=国内物価/海外物価)
  • 相対的PPP:為替変化率=インフレ率格差
  • 実務的には短期は成立しにくいが、長期的な相場決定要因として機能

4. 金利平価説(IRP)

  • カバー付き金利平価:先物為替相場で調整された金利の裁定関係
  • カバーなし金利平価:金利差=予想為替変化率
  • 金利が高い国の通貨は割高な先物相場で取引される
  • 国際資本移動と関連し、短期の資本流動を説明

5. マンデル=フレミング・モデル

開放経済の一般均衡モデル。政策効果は為替制度に依存します。

  • 変動相場制:財政政策は無効(為替調整で相殺)、金融政策は有効
  • 固定相場制:財政政策は有効、金融政策は無効(外貨準備変動)
  • 資本移動度が高いほど効果は顕著

6. 国際収支不均衡と調整メカニズム

  • 価格調整:為替相場変動による調整(変動相場制)
  • 所得調整:景気変動による輸入減少・輸出増加
  • 資本移動:金利差による資本流動で短期的に調整
  • 日本は長年経常収支黒字で海外純資産国

7. 現代的な国際経済課題

  • グローバルサプライチェーン:為替変動の実務的影響が増加
  • ホットマネー:短期金利差による投機的資本移動
  • 通貨危機:固定相場制下での急激な資本流出
  • FTAなど地域統合による貿易構造の変化

頻出ポイント

  • 為替相場変動が企業経営(特にキャッシュフロー)に与える具体的影響の分析
  • 経常収支と資本収支の関係、および国際収支恒等式の理解
  • 固定相場制と変動相場制における政策効果の違い
  • PPPとIRPによる為替相場決定メカニズムの基本原理
  • 国際マクロ経済環境下での企業の対応戦略(ヘッジ、現地化など)
関連過去問(20問)
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令和7年度 第18問 設問2 ある国際的に規格化された財に対する関税の効果を考える。国際市場でP の価 f 格が成立している当該財の国内需要曲線はD、...
A7. 消費者行動理論 12問

消費者行動理論の全体像

消費者行動理論は、購買決定プロセスと影響要因を体系的に理解するための学問です。中小企業診断士試験では、意思決定モデル、購買段階、関与度、情報探索、動機づけなどが重要出題テーマとなります。

主要な購買意思決定モデル

  • EKBモデル(Engel-Kollat-Blackwell Model):問題認識→情報探索→代替案評価→購買決定→購買後評価の5段階
  • ハワード・シェス・モデル:刺激→認知→学習→意思決定のプロセス。消費経験による学習効果を重視
  • ニコシア・モデル:広告刺激からの企業側の発信と消費者側の受け入れ段階を詳細に分析

消費者関与度(Involvement)

関与度とは、購買対象に対する個人的重要性や関心の程度を指します。試験では以下の区分が頻出です。

  • 高関与商品:高額商品、リスクが大きい、個人的重要性が高い→情報探索多い、比較購買
  • 低関与商品:日用品、低額、習慣的購買→情報探索少ない、衝動買い傾向
  • 関与度により、広告戦略や販売手法が変わることが実務的ポイント

情報探索と評価

  • 内的情報探索:記憶から情報を引き出す(既知情報の活用)
  • 外的情報探索:広告、口コミ、専門家意見、実物調査など外部からの情報収集
  • 評価基準:顕在属性(客観的特性)と潜在属性(心理的価値)の両面から評価
  • 適応レベル理論:刺激が期待値に適応すると効果が減少

購買行動に影響を与える要因

  • 個人的要因:ライフスタイル、パーソナリティ、年齢、性別、所得
  • 心理的要因:動機、知覚、態度、学習経験
  • 社会的要因:家族、参照集団、社会階級、文化
  • 状況的要因:購買時点、場所、時間的余裕

動機づけ理論との関連

  • マズローの欲求階層説:生理的欲求→安全欲求→社会的欲求→尊重欲求→自己実現欲求。商品価値訴求の基礎
  • 動機づけ研究:潜在的なニーズを顕在化させるマーケティング手法の重要性

購買後行動

購買は終点ではなく、購買後の経験が重要です。

  • 認知的不協和:購買後に選択肢の比較を後悔する心理。解消により満足度向上
  • 顧客満足度(CS):期待と実績のギャップで決定。リピート購買と口コミ評価に影響
  • ロイヤルティ形成:繰り返し購買による習慣化とブランド忠誠

B2C vs B2B消費者行動の相違

  • B2C:個人的動機、感情的判断が相対的に大きい
  • B2B:理性的評価、複数決定者、導入効果の定量分析重視

頻出ポイント

  • EKBモデルの5段階プロセスは毎年出題される可能性が高い。各段階の特徴を事例で説明できる準備が必須
  • 関与度による購買行動の違い——高関与と低関与で企業の対応戦略が変わることの理解
  • 情報探索(内的・外的)と代替案評価は実務的な設問で頻出。デジタル化時代の影響も注視
  • 購買後の認知的不協和と顧客満足。継続取引や口コミへの影響を意識した解答
  • マズローの欲求階層とマーケティング訴求のリンク。商品・サービスの価値提案がどの層に訴えるかの分析
関連過去問(12問)
令和3年度 第4問 コロナ禍で落ち込んだ経済を支えるための対策のひとつに、個人や世帯に対する 一時金の給付がある。この一時金の経済効果に関す...
令和3年度 第15問 下図のような形状をした無差別曲線に関する記述として、最も適切な組み合わせ を下記の解答群から選べ。 Y財 X財 a X財...
令和3年度 第16問 限られた所得を有する個人がおり、X財とY財を購入することができるとす る。下図には、この限られた所得に基づいて予算制約線...
令和3年度 第17問 大学生のAさんは、アルバイト先の時給が上がったことで、所得が増加した。そ の結果、お昼に学食に行く回数が減り、イタリアン...
令和4年度 第4問 絶対所得仮説によって所得と消費の関係を述べた記述として、最も適切なものは どれか。
令和4年度 第11問 下図には、需要曲線が描かれている。この図に関する記述の正誤の組み合わせと して、最も適切なものを下記の解答群から選べ。 ...
令和5年度 第16問 下図は、所得水準と、ある財の消費量の関係を表したエンゲル曲線である。この 図から読み取れる記述の正誤の組み合わせとして、...
令和6年度 第5問 下図は、ケインズ型消費関数を直線ABによって描いている。この図に関する記 述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下...
令和6年度 第14問 下図は、ある個人の予算制約線を描いている。当初の予算制約線はABであり、 このとき、この個人は点Eで決まる数量のX財とY...
令和6年度 第21問 下図は、課税と給付を組み合わせた負の所得税の効果を考えるため、縦軸に可処 分所得、横軸に当初所得を測り、45度線の直線O...
令和7年度 第13問 需要の価格弾力性(絶対値)に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切な ものを下記の解答群から選べ。 a 需要の価格...
令和7年度 第14問 ある家計が所得をすべて使ってX財とY財の消費に充てるものとする。当初、 予算制約線ABの下で、無差別曲線と接する点Fで最...
A8. 企業行動・生産理論 13問

企業行動・生産理論の要点まとめ

企業行動・生産理論は、企業がいかに生産決定を行い、利潤を最大化するかを分析する領域です。経営学的視点と経済学的視点の両面から出題されます。

1. 利潤最大化と企業行動

企業の基本的な目標は利潤の最大化です。利潤 = 収益 - 費用の関係において、以下の条件で利潤最大化が達成されます。

  • 限界収益(MR)= 限界費用(MC)の条件が成立する産出量
  • 完全競争市場:価格 = MC で供給量決定
  • 不完全競争市場:MR = MC で供給量決定後、需要曲線から価格を決定
  • 短期と長期の利潤最大化戦略の相違を理解

2. 生産関数と規模の経済性

生産関数は投入要素(労働・資本)と産出量の関係を示します。

  • 平均生産性(AP):総産出 ÷ 投入量
  • 限界生産性(MP):投入量1単位増加時の産出増加量
  • 規模の経済性:生産規模拡大で平均費用が低下
  • 規模の不経済性:生産規模拡大で平均費用が上昇
  • 最適規模:平均費用が最小となる生産量

3. 費用構造の分析

企業の意思決定に直結する重要な概念です。

  • 固定費用(FC):産出量に関わらず一定(家賃、減価償却費など)
  • 変動費用(VC):産出量に応じて変化(材料費、労務費など)
  • 平均費用(AC):総費用 ÷ 産出量 = AFC + AVC
  • 限界費用(MC):産出量1単位増加の追加費用
  • 短期と長期の費用曲線形状の相違

4. 市場構造と企業行動

市場構造により企業の行動パターンが大きく異なります。

  • 完全競争市場:多数の小企業、同質商品、自由参入・退出、価格受容者
  • 独占競争:多数企業、差別化商品、自由参入・退出、短期利潤可能
  • 寡占:少数企業、戦略的相互作用、参入障壁あり
  • 独占:単一企業、参入障壁、価格設定者、長期利潤可能

5. 供給曲線と産業供給

  • 個別企業の供給曲線:MC曲線(平均可変費用以上の部分)
  • 産業供給曲線:個別供給曲線の水平和
  • 短期供給曲線:既存企業のみで構成
  • 長期供給曲線:参入・退出を含む、より価格弾力的

6. 経営学的企業行動理論

利潤最大化以外の目標を持つ企業行動も出題されます。

  • 売上高最大化仮説:利潤制約下で売上最大化を追求
  • 満足化理論:利潤最大化ではなく「十分な利潤」を目指す
  • 行動企業論:組織内の利害関係者の影響を考慮

頻出ポイント

  • MR = MC条件:利潤最大化の普遍的ルール。完全競争では価格=MC、不完全競争ではMR=MCで量決定後に需要曲線から価格決定
  • 短期と長期の区別:固定要素の存在期間の相違。短期利潤と長期利潤、参入・退出の可否が異なる
  • 規模の経済性と費用曲線:AC曲線のU字形、最適規模の概念。生産量増加で平均費用がどう変化するか
  • 市場構造による行動の相違:完全競争は価格受容者で供給曲線=MC、独占は価格設定者で需要曲線と限界収益の関係を考慮
  • 過去問での数値計算問題:利潤計算、最適生産量の決定、費用最小化問題が頻出。グラフ読み取りと並行して計算練習が必須
関連過去問(13問)
令和3年度 第22問 下図のような労働市場について考える。この図に関する記述として、最も適切な 組み合わせを下記の解答群から選べ。 賃金 労働...
令和4年度 第12問 下図には、供給曲線が描かれている。この図に関する記述の正誤の組み合わせと して、最も適切なものを下記の解答群から選べ。 ...
令和4年度 第15問 設問1 利潤最大化を達成するための最適生産について考えるためには、総収入と総費用 の関係を見ることが重要である。下図には、総収入...
令和4年度 第15問 設問2 利潤最大化を達成するための最適生産について考えるためには、総収入と総費用 の関係を見ることが重要である。下図には、総収入...
令和4年度 第16問 設問1 財の生産においては、労働や資本といった生産要素を効率的に投入することが必 要となる。下図では、最適な生産要素の投入量を考...
令和4年度 第16問 設問2 財の生産においては、労働や資本といった生産要素を効率的に投入することが必 要となる。下図では、最適な生産要素の投入量を考...
令和5年度 第14問 下図は企業の短期費用曲線を示し、縦軸のOAが固定費用を表している。ここ で、総費用曲線TC上の接線のうち、①その傾きが最...
令和5年度 第15問 ワインとチーズという2財を生産するために、2つの生産要素である資本と労働 をどのように配分するかという問題を考える。 縦...
令和6年度 第15問 下図は、労働と資本の価格および生産技術水準が一定で、かつ完全競争市場の下 で2つの等費用線と等産出量曲線を示している。 ...
令和6年度 第20問 設問1 労働市場を示した下図において、Dは労働需要曲線、Sは労働供給曲線であり、 点Eで均衡し、そのときの均衡賃金率はW、均衡労...
令和6年度 第20問 設問2 労働市場を示した下図において、Dは労働需要曲線、Sは労働供給曲線であり、 点Eで均衡し、そのときの均衡賃金率はW、均衡労...
令和7年度 第15問 設問1 企業の短期費用曲線に関連して、下記の設問に答えよ。 (設問1) 限界費用に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切...
令和7年度 第15問 設問2 企業の短期費用曲線に関連して、下記の設問に答えよ。 (設問2) 下図は、ある財を生産する企業の限界費用曲線MCと当該財...
A9. 市場均衡・市場の失敗 19問

市場均衡・市場の失敗

中小企業診断士試験で頻出される経済学の重要テーマです。市場メカニズムの動作原理と、その限界を理解することが合格のカギとなります。

1. 市場均衡(完全競争市場)

完全競争市場では、需要と供給が一致する点で市場均衡が成立します。

  • 需要曲線と供給曲線の交点 = 均衡点
  • 均衡価格(equilibrium price)と均衡取引量が決定される
  • 価格機能により資源の最適配分が実現
  • 市場参加者は価格受容者(プライステイカー)

完全競争市場の前提条件

  • 多数の売り手と買い手が存在
  • 同質の商品
  • 参入・退出の自由
  • 完全情報の仮定
  • 取引費用がゼロ

2. 市場の失敗(Market Failure)

現実の市場は完全競争条件を満たさず、資源配分が非効率になる現象が発生します。

主要な失敗の類型

  • 外部性(Externalities):第三者に影響を及ぼすコスト・便益が市場価格に反映されない
    • 負の外部性:公害、環境汚染(社会的費用 > 私的費用)
    • 正の外部性:教育、研究開発の波及効果(社会的便益 > 私的便益)
  • 公共財(Public Goods):非競争性と非排除性を持つ財
    • 防衛、治安、国防など政府が供給
    • 市場メカニズムでは過少供給
    • フリーライダー問題が発生
  • 情報の非対称性(Asymmetric Information):取引当事者間で情報量に格差
    • 品質を判別できない買い手が不利
    • アドバース・セレクション、モラルハザードのリスク
  • 不完全競争:独占、寡占などにより価格支配力が存在
    • 独占企業は限界費用より高い価格設定
    • 社会的便益の損失(デッドウェイト・ロス)
  • 規模の経済:自然独占産業で複数企業の並存が非効率
    • 電力、ガス、鉄道などのインフラ産業

3. 市場の失敗への対策

  • 税制・補助金:外部性を内部化(ピグー税)
  • 規制:排出規制、価格規制、参入規制
  • 政府供給:公共財の提供
  • 所有権の明確化:コアース定理による効率化
  • 情報開示制度:情報格差の縮小

頻出ポイント

  • 完全競争市場の前提条件5つと現実との乖離を説明できること
  • 市場の失敗5類型それぞれの定義と具体例(特に外部性と公共財)
  • 外部性で「社会的費用=私的費用+外部費用」の関係式
  • デッドウェイト・ロスの概念と不完全競争での発生原理
  • 市場の失敗に対する政府介入の正当性と具体的施策の関連付け
関連過去問(19問)
令和3年度 第13問 市場取引において、売り手の行動を表す曲線は「供給曲線」、買い手の行動を表す 曲線は「需要曲線」と呼ばれている。下図に基づ...
令和3年度 第14問 左図では供給曲線が垂直になっており、また、右図では需要曲線が垂直になって いる。需要曲線がシフトする場合の売り手の収入の...
令和3年度 第18問 生産に外部経済が伴う場合の市場(cid:13432)衡を考える。下図には、需要曲線D、私的 限界費用曲線S 、社会的限界...
令和3年度 第21問 消費の競合性と排除性に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なもの を下記の解答群から選べ。 a マグロの漁場のよ...
令和4年度 第13問 代替財、補完財と需要曲線のシフトについて考える。ここでは図は省略するが、 縦軸に価格、横軸に数量をとるものとする。2財の...
令和4年度 第14問 下図には、Q=-P+10で表される需要曲線が描かれている(Qは需要量、P は価格)。点Aおよび点Bにおける需要の価格弾力...
令和4年度 第20問 世界経済が低迷する中、国際的な政策協調が必要とされている。 いま、隣り合うA国とB国が「環境保護」と「経済成長」を目的と...
令和4年度 第21問 情報の非対称性がもたらす逆選択に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も 適切なものを下記の解答群から選べ。 a 自動車...
令和5年度 第12問 下図において、ある農産物に対する需要曲線Dの下で、垂直な供給曲線S が収 穫量の増加(Q →Q)に伴ってS にシフトし...
令和5年度 第13問 一定の賃貸住宅について、下図の需要曲線Dと供給曲線Sの下で当初の市場価 格(家賃)がP、均衡取引量がQ であったとする。...
令和5年度 第17問 外部不経済の内部化を意図して採用されると想定される政策や制度に関する記述 として、最も適切なものはどれか。
令和5年度 第18問 情報の不完全性に起因するモラルハザードを軽減することを主な目的として行わ れる事例として、最も適切なものはどれか。
令和6年度 第13問 需要の価格弾力性(絶対値)に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切な ものを下記の解答群から選べ。 a ある財につ...
令和6年度 第16問 設問1 短期の完全競争市場下における価格と企業の生産との関係を考える。下図には、 ある財の生産に関する限界費用曲線MC、平均費用...
令和6年度 第16問 設問2 短期の完全競争市場下における価格と企業の生産との関係を考える。下図には、 ある財の生産に関する限界費用曲線MC、平均費用...
令和6年度 第18問 下図は、ある観光資源に関する消費の外部不経済を示している。観光客の増加に 伴う交通渋滞やゴミの投棄など、観光資源の消費は...
令和6年度 第19問 家計が消費する財・サービスは、①消費が競合するかどうか(競合性)と、②対価 を支払わない人の消費を排除できるかどうか(排...
令和7年度 第12問 完全競争市場における、ある上級財の需要曲線と供給曲線のシフトに関する記述 の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記...
令和7年度 第17問 工場排水が自然環境と近隣住民の生活に悪影響を与えるような、生産活動に負の 外部性が伴う場合の市場均衡を考える。下図には、...
A10. 不完全競争 8問

不完全競争の定義と特徴

不完全競争とは、完全競争市場の条件を満たさない市場構造です。完全競争では「多数の企業」「同質商品」「自由な参入・退出」「情報の完全性」が前提ですが、これらのいずれかが欠ける状態が不完全競争です。

不完全競争の主な形態

  • 独占(Monopoly):1社のみが供給。参入障壁が高い。価格支配力あり
  • 寡占(Oligopoly):少数企業による供給。相互依存関係が強い
  • 独占的競争:多数企業が差別化された商品を供給。自由な参入・退出は存在

独占市場の特徴と価格決定

独占企業は価格支配力(Price maker)を持ちます。完全競争企業が価格受取人(Price taker)であるのに対し、独占企業は供給量を調整して価格を決定できます。

  • 独占企業は限界収入(MR)=限界費用(MC)で生産量を決定
  • 完全競争では P = MR = MC ですが、独占では P > MR = MC
  • 利潤 = (P - AC)× Q で計算可能

寡占市場の分析モデル

  • クールノー・モデル:各企業が相手の生産量を与件として、自社の生産量を決定
  • ベルトラン・モデル:各企業が相手の価格を与件として、自社の価格を決定
  • カルテル:企業が協調して価格・生産量を決定し、利潤を最大化(ただし日本では不当な場合が多い)

独占的競争の特徴

多数企業による差別化が中心的特徴。短期には超過利潤を獲得しますが、長期的には企業参入により利潤は減少し、P = ACに収束します。

  • 差別化により下向き傾斜の需要曲線を持つ
  • 長期均衡ではP > MC(非効率性)
  • 過剰参入による資源浪費が起こる可能性

参入障壁と市場支配力

不完全競争が存続する理由は参入障壁の存在です。

  • 自然独占:規模の経済が強く、1社生産が効率的(鉄道、電力など)
  • 特許・知的財産権:技術的優位を保護
  • 多額の初期投資:資本集約的産業での参入困難
  • ブランド力・消費者ロイヤルティ:差別化による競争優位

独占禁止法との関係

不完全競争そのものは違法ではありませんが、不当な市場支配力の濫用カルテルは独占禁止法で規制されます。中小企業診断士は競争政策の理解が重要です。

頻出ポイント

  • 独占企業と完全競争企業の価格決定メカニズムの違い(P vs MR)
  • 寡占市場におけるクールノー・モデルとベルトラン・モデルの区別
  • 独占的競争における差別化と長期均衡(P=AC)の理解
  • 参入障壁の具体例と市場構造維持の関係
  • 不完全競争市場での資源配分の非効率性と社会的損失
関連過去問(8問)
令和3年度 第19問 下図によって独占企業の利潤最大化を考える。Dは独占企業の市場需要曲線、 MRは独占企業の限界収入曲線、MCは独占企業の限...
令和3年度 第20問 ある遊園地では、入場料とアトラクション乗車料金の2部料金制をとっている。 太郎さんがこの遊園地のアトラクションに乗る回数...
令和4年度 第17問 完全競争と不完全競争における市場の特徴に関する記述の正誤の組み合わせとし て、最も適切なものを下記の解答群から選べ。 a...
令和5年度 第19問 下図は、ある地域で独占的な地位にある電力会社の平均費用AC、限界費用MC、 限界収入MRおよび同地域での電力の需要曲線D...
令和5年度 第20問 企業城下町のように働く場が限られているケースは、下図のような、買い手独占 の労働市場モデルによって考察できる。Dは労働需...
令和5年度 第22問 特定の財の市場において競合関係にある企業同士が、同一価格での販売を約束す るカルテルを結ぶことは、互いの企業にとって有利...
令和6年度 第17問 下図は、ある財の生産販売を1社が完全に独占した市場を示している。この財の 需要曲線がDであり、MCが生産者の限界費用、M...
令和7年度 第16問 独占市場を示した下図において、この財の需要曲線がDで与えられ、MCが企 業の限界費用、MRが同じく限界収入である。この独...
A11. 経済統計・景気 12問

経済統計・景気の要点まとめ

中小企業診断士試験では、日本経済の現状把握に必要な主要経済統計指標と景気判断の仕組みが問われます。毎年複数問出題されるため、指標の意味と数値トレンドの理解が重要です。

主要経済統計指標

GDP(国内総生産)

  • 日本の名目GDP:約550~560兆円(直近)
  • 実質成長率と名目成長率の違いを理解
  • 四半期ごとに内閣府が発表

鉱工業生産指数

  • 製造業の生産活動を示す先行指標
  • 経済産業省が毎月発表
  • 景気判断の重要な材料

失業率・有効求人倍率

  • 失業率:労働力人口に対する失業者の割合
  • 有効求人倍率:求人数÷求職者数(1倍以上で売り手市場)
  • 厚生労働省が毎月発表

消費者物価指数(CPI)

  • インフレ率の指標として使用
  • 前年同月比で計測
  • 日銀の金融政策判断に影響

小売業販売額・鉱工業生産

  • 消費と生産の動きを示す一致指標
  • 月次データで景気転換点を把握

景気判断の仕組み

内閣府の景気動向指数

  • 先行指数:景気に先行して動く(約6ヶ月先行)
  • 一致指数:景気と同時に動く
  • 遅行指数:景気に遅れて動く
  • 月次発表で「景気転換点」を判定

景気基準日付

  • 内閣府が景気の山と谷を事後的に決定
  • 試験では近年の景気局面(令和2年コロナショック以降)の理解が必須

近年の景気トレンド

令和2年コロナパンデミックで急速な景気悪化、その後回復局面、令和4年の物価上昇局面を経て、現在は緩やかな成長基調が続いています。試験では統計数値の具体的な動きと時期の整合性が問われやすいため、過去数年のトレンドを年表で整理することが有効です。

経営統計との連関

  • マクロ経済指標の変化が中小企業の経営環境に影響
  • 景気判断に基づく事業計画・資金調達戦略の立案
  • 金融機関の貸出態度や信用調査との関係性

頻出ポイント

  • 景気動向指数の3つの指数(先行・一致・遅行)の定義と役割の違い
  • 失業率と有効求人倍率の計算方法と経済意味
  • 直近の景気基準日付と景気局面(山・谷の時期)
  • 主要統計の発表機関と発表周期(内閣府・経産省・厚労省など)
  • マクロ経済指標から企業経営への波及メカニズムの理解
関連過去問(12問)
令和3年度 第11問 雇用・失業の用語に関する記述として、最も適切なものはどれか。
令和4年度 第1問 下図は、1990年以降の日本について、ジニ係数を使い、所得再分配政策による 所得格差の改善状況の推移を示したものである。...
令和4年度 第8問 景気循環に関する記述として、最も適切なものはどれか。
令和5年度 第3問 下図は、2022年3月末時点での、日本とアメリカにおける家計の金融資産構成 を示したものである。図中のa~cに該当する金...
令和5年度 第6問 内閣府の景気動向指数における一致系列の経済指標として、最も適切なものはど れか。
令和6年度 第2問 下図は、日本、米国、韓国、OECD平均の1人当たり労働生産性(購買力平価換 算USドル表示)の推移を示したものである。 ...
令和7年度 第1問 下図は、日本の一般会計税収のうち、主要3税目の近年の推移を示したものであ る。図中のa~cに該当する税目の組み合わせとし...
令和7年度 第2問 下図は、近年の日本における男女別・雇用形態別の雇用者数の推移を示してい る。図中のa~cに該当する項目の組み合わせとして...
令和7年度 第5問 2種類の財(X財とY財)の数値例で物価指数を計算する。これらの財の単位当た りの価格と数量は、それぞれ以下の表のとおりで...
令和7年度 第6問 景気循環の周期性に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下 記の解答群から選べ。 a コンドラチェフ・サイ...
令和7年度 第19問 下図は、所得税において一定の所得水準までは課税しない基礎控除の効果を考え るため、縦軸に税額、横軸に所得をはかり、線形の...
令和7年度 第20問 下図は、縦軸に所得累積比率、横軸に世帯累積比率をはかったときのローレンツ 曲線を示している。 この図に関する記述として、...